2010-11-12 ひさびさに突発性難聴の話を。

たまには真面目に本業の話でも。思いつくままどんどん書きました。まとまってないけどご勘弁を。

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私の元勤務先だった治療院は新橋にあります。一掌堂治療院。7-8年前から突発性難聴の鍼灸治療で有名になっておりまして、全国から、海外からも患者さんが押し寄せている治療院です。


私はずっと長く、一掌堂のHP管理に携わっていたこともあって、辞めてからのほうがもうずっと長いのに、突発性難聴治療の関連治療院として、一掌堂とのつながりが強いのでした。


私が勤務していた頃はまだ普通の治療院で、普通の疾患(って言うのもヘン?)の人がほとんどで、腰痛(ぎっくり腰とか、椎間板ヘルニアとか)、手の痺れや脱力(頚肩腕症候群や、いわゆるムチウチ)、五十肩、頭痛、不眠、不定愁訴(次から次へといろんな症状が出る人たち)、定期的な健康管理、そんなかんじの患者さんがたくさんおいでになっていました。


そんな中で育った鍼灸師としての私の基本中の基本は、いろんな疾患を見ての鑑別、でした。稀ではあるけれど、鍼灸院では手に負えない、すぐに病院のお世話になるほうがいい場合をしっかりと見分けること。身体の不調というより、むしろ不規則な生活や過労の結果としての体調不良であれば、そのあたりなんとかならないかいろいろ話し合ってみること。


結構多いケースしては、気のせい(つまり、その人それぞれの独特のパターンから引き起こされている)で発生している病気を見抜くこと。そんなかんじかな。


以下、突発性難聴に限っての話ですけれど。ひとりで仕事するようになってから、突発性難聴、および耳の疾患の方にはずいぶんたくさんお目にかかりました。こんな小さな治療院なのにね。ずいぶん遠くからも、いろんな方がおいでになられた。


その中で、経験的に蓄積してわかってきたのはこんなこと。低音性の人は、治りやすく繰り返しやすいので、きちんと相応の説明を。回転性のめまいの人はほぼ確実に重症。大げさに症状を言う人と、控えめに症状を言う人の区別をよく見分けて、重症度をよく観察する。


聴覚は正常で、その他症状がある場合はケースバイケースで、その人それぞれの背景や生活状況をきちんとヒアリングする。


残念だけれど、スケールアウト(ぜんぜん聞こえない)した方や、発症後もう何年も経ってる方や、両耳同時に症状が進行している方などは、なかなか元通りにすっきり回復するケースが少ないので、(もしこれ読んで希望を挫かれる人がいたらゴメンナサイ。あくまでも一般的な話です)下手に根拠のないことを言わず、何年も先のことまで考えながら話をする。とか。


ごく正直に言えば、重症だとたいていの場合は、元通りになるよりも、より不快でない状況を保って、症状とうまく折り合いをつけて生活していくことの方が大事なんです。


あとは、繰り返さないように。これもかなり大事。教科書的には「突発性難聴は繰り返さない」のだけれど、現実には、なんども繰り返してる人はいらっしゃいます。(繰り返すと病名はたぶん「メニエール病」に変わる。でもそれだけ。結局治療はほぼ同じ)一般論はあんまりしたくないんだけど、ざっと概略。


例えば、突発性難聴(耳の関連疾患も含みます。器質性とウイルス性除く)でお困りの方々のたぶん8割9割はみんな真面目で几帳面。


責任感が強くて、しっかりもの。周囲の人々に頼りにされてる方々。聴覚過敏、なほど耳がいい人が多い。(またの名を神経質なほど…とも)結果的に、音楽がセミプロだったり、お仕事の方も少なくない。(音楽関係者の場合には、音響性外傷の可能性も増えますしね)


いつも緊張が強くて、うまく力を抜けない人が多いので、噛み締めすぎて奥歯がぼろぼろ→額関節症とか、寝てるときも拳を握りしめて寝てるので手が痛い、とか多い。じーっとなんかを見つめてることが多い(ようです)。


不眠率ももの凄く高いです。頭や気分の切り替えが苦手の人が多い。そんな方々が、いっしょうけんめい頑張ってるうちに、突然耳が聞こえなくなっちゃいました。。。みたいなストーリーがある場合がほとんど。


もちろんひとりひとり背景が違うし、身体も違うんですけど、ほぼ間違いなく、こうしたパターンは共通しています。そこを、それぞれの人に合った形でひたすら読み解き続けて、再プログラミングのお手伝いをしてる。ってのが、ここ数年の私の仕事です。

ま、マッサージしたり、ハリしたりもしてますけど〜(笑)


黙って触ればぴたりとわかる。黙って触ればぴたりと治る。みたいな素晴らしい神業みたいな技術の「名人」も凄いですけど〜…個人的には、よくわかんないうちにされたことって、

あんまりよくわかんないんだよね。。。(笑)


自称名人、のえげつない技とかもいろいろ見ちゃったし。本物オーラがびゅんびゅん出てるような名人は尊敬していますけれど、とても私はすぐにそんな風になれるはずもなく。


とりあえず、現代社会のなかでは、きちんと相手を見て、なにが問題で、なにを求めているかをキャッチして、その上で、やり取りした上で、こちらが提供出来ることを出していく、ほうがより現実的だし、安定したニーズがあるだろうと思っています。


あ、たぶん、どんな「名人」であっても、完全に聞こえなくなって長く経ってる状態を、発症前と同じ元通りにするのは難しいんじゃないかと思います。奇跡でもない限り。たいへん残念なことですが。(2010年11月12日)

鍼灸・手技セラピーたまゆら

【2021年末に閉業】 2004年5月の開業より、たくさんのご愛顧ありがとうございました。これからもみなさまのご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げます。